豪雪地に住みながら起業準備をするには、何を強みにすればいい?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

北陸の豪雪地に住んでいます。冬になると車の通勤すら一苦労で、都会のように勉強会や交流会に気軽に通えません。人口も少ない土地なので、ここで起業の準備を進めるのは無理があるのではと感じています。

雪国の地方在住でも、無理なく続けられる起業準備の形はあるのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

続けられます。むしろ雪国に住んでいることは、準備のうえで不利な条件ではありません。ハンデに見える「雪国の暮らし」と「地域の事情を知っていること」そのものが、外の人には作れない売り物になります。都会の交流会に通えないぶんは、オンラインを販路にすれば距離の問題は消えます。

私はこれまで6万人を超える方の起業準備を見てきましたが、地方在住の方ほど「都会と同じやり方ができないから不利だ」と思い込んでいます。そこが出発点を間違えやすいところです。都会と同じ土俵で戦おうとするから不利に見えるだけで、土俵を変えれば住んでいる場所が一番の武器になります。

人が外へ流れる土地だからこそ、地域の知識に値段がつく

総務省の住民基本台帳人口移動報告(2024年)では、東京圏の転入超過が13万人を超え、人が大都市へ集まる流れが続いています。一方で27県が社会減少となり、地方から人が出ていく構図がはっきり出ています。

この数字を、地方が衰えていく話として読む必要はありません。人が外へ流れるということは、その土地の暮らしや事情を内側から知っている人が、年々貴重になっているということです。だからこそ、地域の知識を持っている人の説明や案内に値段がつく場面が増えていきます。

雪深い土地での暮らし方、雪と付き合う段取り、地元の人だけが知っている季節の仕事。こうした知識は、外から移り住む人やその土地に関心を持つ人にとっては手に入りにくいものです。

通勤難はオンラインで消える

冬の通勤に苦労する話は、起業準備では重い問題に見えて、実はそうでもありません。国土交通省のテレワーク人口実態調査(2024年度)では、雇用型のテレワーカーの割合は24.6%でした。働き方そのものが画面の向こうで完結する形に広がってきています。

準備段階でやることの多くは、家のなかで完結します。自分の知識を文章や動画にまとめる。地元の話をオンラインで発信する。遠くに住む相手とビデオ通話で打ち合わせをする。雪で外に出られない日こそ、家でできる起業準備に充てる時間だと考え方を切り替えてみてください。都会の人が通勤に費やしている時間を、あなたは雪のおかげで手元に残せます。

住んでいる土地そのものを、売り物に変える

地方在住の方がつまずきやすいのは、売り物を自分の趣味や資格の中だけで探そうとすることです。拙著『朝晩30分 好きなことで起業する』では、自分が住む場所や地域の事情そのものを商品にする道を紹介しています。特別な才能を新しく身につけなくても、その土地に暮らしているという事実が、すでに売り物の素になっているという考え方です。

雪国に住むあなたは、その素を生まれながらに抱えています。その地域の暮らしについては、東京の人より圧倒的に詳しい。地域性は、克服すべき制約ではなく、そのまま立派な強みです。住む土地が持つ事情を売り物として届ける先は、オンラインを使えば全国に広げられます。

  • 知識として売る:
    雪国の暮らしの工夫・地域の季節仕事のノウハウを文章や動画にまとめて届ける
  • 体験として売る:
    雪遊び・地元の食・自然を使った体験を、訪れる人や移住検討者に案内する
  • 橋渡しとして売る:
    地元の生産者と外の買い手、移住したい人と地域をつなぐ役回りを担う

同じ「地域の知識」でも、売り方は一つではありません。自分の性格や持ち時間に合う形を選べます。文章を書くのが好きなら知識として、人と会うのが好きなら体験や橋渡しとして。どれも、その土地に住んでいなければ務まらない仕事です。

雪国の信用金庫から始めた沢口さんのこと

起業18フォーラムの会員さんに、北陸の信用金庫で渉外を担当していた沢口さん(仮名・50代)がいます。豪雪地に長く住み、冬は雪かきと通勤で一日が終わる生活でした。当初の沢口さんは「雪国の田舎にいる自分には、都会の人に売れるものなど何もない」と本気で思い込み、起業準備の話になると決まって自分を卑下していました。

転機になったのは、地域SNSに何気なく投稿した雪国の暮らしの工夫が、思いがけず移住検討者から反応を集めたことです。除雪のコツ、雪国の家の選び方、冬の生活費の実際。仕事柄、地域の家計や暮らしの事情を内側から見てきた知識が、外の人には貴重な情報だったのです。

そこから移住相談に乗る発信に絞り込み、3か月で初めての有料相談を受注しました。1年が経つ頃には、雪国移住の相談とオンライン講座で月5万円ほどの収入が立つようになっています。勤め先で培った渉外の経験と、雪国に住み続けた事実。その両方が、そのまま売り物になりました。

  • 住んでいる土地の暮らし・事情を、外の人の視点で書き出す
  • 雪で外出できない日を、家でできる発信や準備の時間に充てる
  • 住んでいる土地の事情そのものを、売り物として位置づける
  • 届ける先はオンラインで全国・全世界に広げる

大切なのは、雪国であることや人口の少なさを克服すべき弱点として扱わないことです。それは外の人が真似できない参入障壁であり、あなたが最初から持っている資産です。

地方在住で顧客も情報も少ないのに、起業準備はどう進めればいい?
● 質問 地方にUターンして会社員を続けています。いつかは自分で何か始めたいのですが、都市部と違って周りに同じ

まず今日できることは、自分が住む土地で「外から来た人なら知りたいだろう」と思える知識を、思いつくまま10個書き出すことだけで十分です。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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