NISAをやれば将来は安心? 起業準備と投資のどちらを優先するか

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

会社員ですが、まわりはNISAやインデックス投資の話ばかりで、私も毎月の積立を始めました。ただ、このまま投資を続けるのと、いつか会社の外で稼ぐ準備に動き出すのと、限られた余力をどちらに回せばいいのか迷っています。

投資をしておけば、起業準備はしなくてもよいのでしょうか?

起業前質問集

● 回答

投資さえしておけば起業準備は要らない、と考えていませんか。実は、資産運用と起業準備は「どちらか一方を選ぶ」ものではありません。役割がまったく違う、別の備えです。本当に考えるべきなのは「どちらをやるか」ではなく「どちらを先に動かすか」という順番のほうです。

まず、よくある考え方の混ざり方を整理してみます。

  • 投資で将来不安が解消したという感覚
  • 起業準備は投資より大変で高リスクという思い込み
  • 余力は一つしかなく二択だという前提
投資と起業準備は「お金の増やし方」がそもそも違う

この三つはどれも自然な感覚ですが、一つ大事な前提が抜けています。投資と起業準備は、お金の増やし方の種類がそもそも違います。投資は、すでに持っているお金に働いてもらって少しずつ増やす方法です。一方の起業準備は、自分が会社の外でお金を生み出す力そのものを太くしていく作業です。

言い換えると、投資は「お金が資産」、起業準備は「あなた自身が資産」という違いです。どちらも将来への備えですが、片方をやればもう片方が要らなくなる、という関係ではありません。

投資の方は、いま多くの方がすでに動き始めています。金融庁の「NISA口座の利用状況調査」によれば、2024年12月末時点のNISA口座数は2,559万口座、2025年6月末時点では2,696万口座まで増えています。

同年代の同僚や友人がNISAの話をするのは、もうごく自然な状況になっているわけです。

ただ、口座数がこれだけ増えたということは、投資という備えはすでに多くの人と同じ一般的な手段になったとも言えます。そこに自分の時間をどれだけ足しても、差がつくのは入金額の大きさくらいです。そして入金額を増やすには、結局のところ会社の外でも通用する稼ぐ力を上げるしかありません。

迷ったとき、先に動かすべきはどちらか

では、順番の話です。迷ったときに先へ小さく動かすべきは、起業準備のほうです。

理由は、起業準備の最初のステップはほとんどお金がかからず、投資の積立を止めずに並行できるからです。自分の仕事の経験を紙に書き出す、知人に「こういう相談に乗れるけれど需要はあるかな」と聞いてみる、小さなサービスを数千円で試しに売ってみる。ここまでは毎月の積立を一円も削らずに進められます。

投資は今のペースで続けながら、空いた時間で起業準備の検証を始めればよいのです。まずは今週、自分がこれまでの仕事で人によく聞かれてきたことを三つ書き出すところから始めてみましょう。

  • 投資=手元資金を育てる備え
  • 起業準備=会社の外で稼ぐ力を育てる備え
  • 迷ったときの先手=積立を止めず小さく検証開始

拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』にも書いたのですが、長く安定して大きく稼ぐ方ほど、株式や投資信託より先に「自分の事業」という、利回りを自分の手で動かせる資産を育てています。投資の利回りは自分では決められませんが、自分の商品やサービスの価値は、準備の仕方しだいで自分の手で引き上げられます。

起業18フォーラムの会員さんに、電子部品メーカーで購買を担当してきた持田さん(仮名・48歳・既婚・高校生の子が1人)がいます。持田さんはNISAもiDeCoも満額で続けていて「お金の準備はやっている」という安心感がありました。ただ、定年後にどう働くかについては何の準備もしていないことに、あるとき気づいたそうです。

フォーラムで「お金を増やすことと、稼ぐ力をつけることは別だ」と知り、週末に前職の購買ノウハウを整理し始めました。最初の動きは、知り合いの小さな製造業者に調達コストの見直しを無料で相談に乗っただけです。そこで「これはお金を払ってでも頼みたい」と言われたことが転機になりました。

起業準備を始めて1年たったいまは、月に数件の調達アドバイスのスポット相談を受け、独立後の収入の柱の一つに育てているところです。投資の積立はそのまま続けながら、空いた時間で自分の経験を一度、誰かに試しに役立ててみるところから始めてみてください。

なお、起業準備を始めたあとも、NISAやiDeCoは続けられます。独立を機に解約すべきか迷う方も多いのですが、両方を無理に二択にする必要はありません。

ひとつだけ気をつけたいのは、投資の口座と、起業準備のために使う小さなお金を、はじめから別々に管理しておくことです。分けておけば、起業準備で多少お金を使っても、長期の投資には手をつけずに済みます。独立後のNISAやiDeCoの扱いは、次の記事も参考にしてみてください。

起業してからもiDeCoとNISAは続けられますか?
● 質問 在職中からiDeCoとNISAを積み立てています。将来的に独立起業を考えていますが、独立後もこれらは

投資と起業準備は、競い合う二択ではありません。投資はお金に働いてもらう備え、起業準備は自分が稼ぐ力を太くする備えです。今日できるのは、積立を止めずに、自分の経験を小さく一度だけ試してみることです。


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記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

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