法人営業の人脈と提案力は起業準備にどう活かせる? 競業避止に触れない進め方は?

新井一

記事執筆/監修:新井一(起業18フォーラム代表)
最終更新日:

● 質問

メーカーで20年以上、法人営業をやってきました。取引先との関係づくりや提案には自信があるのですが、いざ起業準備を考えると、私の強みは「会社の看板があってこそ」だったのではと不安になります。

培ってきた人脈や提案力を、競業避止にも触れずに準備へ活かすには、何から手をつければいいでしょうか?

起業前質問集

● 回答

結論を先にお伝えすると、活かせます。ただし「人脈をそのまま持ち出す」のではなく、営業で培った力を「誰にでも提供できる形」に組み替えることが出発点になります。法人営業20年の経験は、相手の課題を聞き出し、最適な提案に翻訳し、信頼を積み上げてきた歴史です。この翻訳力こそが、看板を外しても残るあなたの資産です。

不安の正体は「会社の名刺がなくなったら、誰も会ってくれないのでは」という点だと思います。ここを整理してから動くと、競業避止のリスクを避けつつ、勤めながら進められる準備が見えてきます。

「会社の看板」と「あなた個人の力」を切り分ける

まず、いまの成果のうち、どこまでが会社の力で、どこからが自分の力かを棚卸ししてみてください。取引先が会ってくれたのは会社の信用かもしれません。しかし、商談を前に進めたのは、あなたが相手の本音を引き出し、社内を動かしてきたからです。前者は持ち出せませんが、後者はあなたの中に残ります。

私のこれまでの起業支援の経験では、営業職の方が見落としがちなのは「自分の提案プロセスを言語化できていない」点です。無意識にやってきたヒアリングや段取りを、手順として書き出せる人は強い。それが、独立後に「人に教えられる商品」へ変わるからです。

  • 持ち出せない資産:
    取引先リスト、会社が築いた信用、社内の決裁ルート
  • 持ち出せる資産:
    課題を聞き出す力、提案を組み立てる思考、信頼を積む振る舞い
  • 言語化すべきもの:
    無意識にやってきたヒアリング手順と段取りの型

この切り分けができると、「取引先を奪う」のではなく「自分の型を新しい相手に提供する」という方向で準備が進みます。競業避止の不安が薄れるのは、この発想に切り替わったときです。

競業避止に触れない準備の線引き

競業避止義務は、退職後に「会社と競合する事業」を「会社の顧客や機密を使って」行うことを制限するものです。逆に言えば、いまの取引先や社内情報に手をつけず、自分のスキルを別の市場へ向けるなら、抵触のリスクは大きく下がります。退職を決める前に、まず自分の就業規則と退職時誓約書の競業避止条項を実際に読み、範囲と期間を確認してください。

たとえば、産業機械の法人営業をしていた方が、同じ機械を同じ業界に売る準備を勤めながら進めれば問題になりやすい。けれど、「中小企業の営業担当者に向けた提案資料づくりの相談」のように、業界も顧客層もずらせば、会社と競合しません。

  • 勤めながら避けたいこと:
    いまの取引先への直接の声かけや、商談で得た機密情報の流用
  • 勤めながら進めやすいこと:
    別業界・別顧客層に向けた、自分の提案ノウハウの整理と発信
  • 退職前に確認すること:
    就業規則・誓約書の競業避止条項の範囲と有効期間

顧客を奪わなくても、あなたの経験を必要とする人は別の場所にいます。そこへ向けて準備すれば、退職時のトラブルも避けられます。

人脈は「紹介の連鎖」で広げ直す

ここで著書の話を少しさせてください。拙著『1億円稼いでいる人は何をしているのか?』に「自分発信は2割、他者発信を8割にする」という考え方を紹介しています。自分から売り込むのではなく、人に紹介してもらえる状態を作るほうが、長く伸びるという話です。

営業職の方は、この「他者発信」と相性がいい。長年の取引で、あなたを信頼している人が社外にもいるはずです。前職の同僚、異業種で知り合った担当者、勉強会で出会った人。いまの取引先ではなく、こうした「会社の利害から外れた関係」が、独立後に最初に動いてくれる人脈になります。

大事なのは、退職してから連絡するのではなく、勤めているうちから「自分が何をやろうとしているか」を少しずつ伝えておくことです。売り込みではなく、相談の形で。そうすると、いざ動き出したときに紹介が連鎖します。

勤めながら試せる「小さな提案」から始める

起業18フォーラムにいた平岡さん(仮名・40代後半・男性・産業機械メーカーの法人営業・妻と高校生の子が1人)は、最初は独学で「営業コンサルタント」を名乗ろうとして、つまずいた方です。前職の取引先に提案資料を送ろうとして、競業避止が頭をよぎり、手が止まってしまったそうです。

起業18フォーラムに参加して、勉強会で「業界も顧客層もずらして、自分の型を売る」という考え方に出会い、方向を切り替えました。前職とは関係のない、地方の小さな会社の営業担当者に向けて、提案書の作り方を教える小さな相談サービスを、休日に試し始めたのです。

最初の相手は、勉強会で知り合った別業種の経営者からの紹介でした。半信半疑で始めた相談が「うちの若手にも教えてほしい」と広がり、現在18ヶ月目には、月10万円ほどの相談・研修の収入が勤めを続けながら入るようになっています。来年の独立に向けて、いまは取引先候補を増やしている段階です。

今週は、前職の利害に関係しない知人を2人だけ思い浮かべ、「最近こんなことを考えている」と近況を伝える一報を送ってみてください。

会社員時代の人脈はどう起業準備に活かす? 気をつけるべき点は?
● 質問 会社員10年目です。社外の交流会に時間とお金をかけて人脈を広げてきましたが、起業準備を始めてみると、

日本政策金融公庫総合研究所の2024年度新規開業実態調査では、開業動機として「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」が46.0%を占めています。あなたが積み上げてきた営業の経験は、起業の現場でも確かに求められている力です。


さらに詳しく知るには、以下より検索してみてください!
記事執筆/監修:新井一(あらいはじめ)起業支援キャリアカウンセラー

新井一
起業18フォーラム代表。「会社で働きながら6カ月で起業する(ダイヤモンド社)」他、著書は国内外で全13冊。最小リスク、最短距離の起業ノウハウで、会社員や主婦を自立させてきた実績を持つ。自らも多数の実業を手掛け、幅広い相談に対応している。

起業アイデア診断
【起業セミナー】会社員のまま始める起業準備・6ヵ月で起業する!

【動画セミナー】あなたのタイミングで学べる動画版もあります!

ポイント この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます!